薄毛治療中にミノキシジルを使い始めてから10日前後経過すると、人によっては抜け毛が増えたように感じることがあります。
これは「初期脱毛」とよばれており、ヘアサイクルの乱れが正常に戻る過程で起こる現象です。
新しい髪の毛へと生え替わるために、退行期にある髪の毛が一気に抜け落ちることで起こります。
初期脱毛は、治療開始から10日前後で始まって1か月半ほどで終わるのが一般的です。
もし2か月以上脱毛が続く方や、治療の経過について不安なことがある方は、専門の医療機関で一度相談しましょう。
初期脱毛は薄毛治療で起こりやすい副作用の1つ

薄毛治療にはお薬を使うため、どうしても副作用が起きてしまうケースがあります。
初期脱毛はそのような副作用の1つです。
初期脱毛に耐えきれずにお薬の服用を止めてしまう方もいますが、初期脱毛はきちんとお薬が効いている証拠です。
抜け毛が増えるのは精神的にツライかと思いますが、薄毛治療のためにこの壁は乗り越えなければなりません。
一般的に女性の薄毛治療へ用いられている薬はパントガール、スピロノラクトン、注入治療(メソセラピー)、ミノキシジルの4種類ですが、初期脱毛が見られるのはミノキシジルの外用薬、内服薬のみです。
なぜ初期脱毛が起きるのかの説明に入る前に、まずは簡単に薄毛のメカニズムとミノキシジルの特徴を確認しておきましょう。
薄毛のメカニズム

髪の毛には1本1本寿命があり、伸びる(成長期)・抜ける(退行期)・生える(休止期)を繰り返しており、これがヘアサイクルです。
このヘアサイクルでの成長期の際に、髪の毛を作り出す毛包の成長が十分でないために、髪の毛が極端に細くなり、抜けてしまい、やがて薄毛・抜け毛が目立つようになってきます。
女性型脱毛症(FAGA)の特徴は、特定の部位の脱毛の進行が顕著な男性型脱毛症(AGA)とは異なり、髪の毛の量が全体的にボリュームダウンしてしまいます。
この女性型脱毛症への対策は、細くボリュームダウンしてしまう軟毛を作る『乱れたヘアサイクル』を改善し、強くコシのある毛髪を育てる『正常なヘアサイクル』を導き出すことです。
女性の場合、『乱れたヘアサイクル』の原因は、ホルモンバランスの乱れや血流不全などと言われていますが、
- ストレス
- 遺伝的要素
- 女性特有の冷え性
- 睡眠不足
- 産後の分娩後脱毛症
などの多くの要因も考えられます。
ミノキシジルの特徴

ミノキシジルは、髪を生み出す毛母細胞の分裂を促すことで発毛を促進するのが特徴です。
また、頭皮への血流を促して毛母細胞に栄養をしっかり運べるようにすることで、髪が成長しやすくなるともいわれています。
髪の毛は成長期→退行期→休止期を繰り返して生えたり抜けたりを繰り返しています。
成長期に入ると髪の毛は太く長く育っていくのですが、薄毛に悩んでいる方の場合はこの成長期が通常の方よりも短くなっています。
短くなったヘアサイクルを元に戻してあげるのがミノキシジルの役割です。
ジヒドロテストステロンには影響しないので、薄毛の進行を抑えるのではなく発毛を促進していくお薬です。
初期脱毛のメカニズム

AGAを治療するためには、ヘアサイクルを正常に戻していく必要があります。
初期脱毛はミノキシジルがヘアサイクルに影響することで起こるものです。
ヘアサイクルが整い始める
ミノキシジルを飲み始めると、短くなっていた成長期が少しずつ元に戻っていきます。
薄毛で悩んでいる方は髪の成長期が著しく短くなっており、十分に髪の毛に太さや長さが出ないまま退行期、休止期へと進んでいくのが特徴。
そのため全体的なボリュームが減っていきます。
ミノキシジルを飲み始めるとこれまで休止期や退行期にいた髪の毛も、通常より早い速度で成長期へと移行を始めます。
同時に成長期の長さも回復してくるため、十分に髪の毛が成長できる環境が整えられていくのです。
新しい髪の毛が古いものを押し出す
ミノキシジルにより、ヘアサイクルの「休止期」が短縮されて「成長期(早期)」への移行が早まります。
その結果、健康的な髪の毛が新たに成長しはじめ、長い休止期に入り成長が停止していた髪の毛を押し出していきます。
この“休止期で止まっていた髪の毛(古い毛)”が抜けていく現象が「初期脱毛」です。
初期脱毛では一気に脱毛が進んでいく
ミノキシジルでの治療を始めると、これまでのヘアサイクルから一新して、新しいヘアサイクルが始まります。
休止期や退行期にあった髪の毛も成長期へと急激に発達を遂げていくため、初期脱毛は一気に進んでいくことが多いです。
これまでのヘアサイクルで成長していた髪の毛が抜けて、新しいヘアサイクルで生まれた髪の毛が成長していくために初期脱毛は起こってしまいます。
もともと髪の毛はいつか抜けるものです。
いつかは抜けていく髪の毛が、薄毛治療により同じタイミングで少し早めに抜け始めたと理解しておきましょう。
初期脱毛の期間

薄毛の治療によって初期脱毛が起こる可能性がある、といくら頭の中ではわかっていても、実際にどんどん抜け落ちていく髪の毛を見ているのはツライものです。
髪の毛を増やしたくて治療を始めたのに、一時的にとはいえ脱毛が増えるのはこたえるものがあります。
治療を始める前よりも脱毛が進んでしまう方も少なくはありません。
ここで気になるのが初期脱毛はどれだけ続くのか、その期間についてです。
初期脱毛は早い方ですと治療を開始して10日ほどで始まります。
だいたい10日~1か月ほどで初期脱毛が起こる方が多いです。そしてほとんどの方は初期脱毛が始まって1か月くらいで落ち着いてくると言われています。
初期脱毛がいつから始まっていつ終わるかについては個人差があり、中には3か月ほど続く方もいらっしゃいます。
ただ1つだけ間違いなく言えることは、初期脱毛はいつか必ず終わるということです。
どんどん抜けていく髪の毛に不安感が耐えないかとは思いますが、永遠に続くものではありません。
初期脱毛は一見、治療による抜け毛や薄毛の症状と同じような脱毛現象なので、初期脱毛が起こり始めると「治療薬が効いていない」と勘違いをし、治療薬の使用をやめてしまう方もいます。
しかし初期脱毛が起こり始めた段階でミノキシジルの使用を中断してしまうと、休止期から成長期早期に移行していた髪の毛も再び成長期が短縮したヘアサイクルに入ってしまい、抜け毛が再発してしまうため注意が必要です。
初期脱毛を乗り越えるには

初期脱毛に耐えきれず、治療を止めてしまう方もいるほど精神的なダメージは大きいものです。
初期脱毛を乗り越えるための心構えを持っておくことで、いくらか気持ちに余裕を持てるでしょう。
初期脱毛は、新しい健康的な髪の毛が生えようとしているからこそ起こるものです。
新しい命がしっかりと成長していなければ、初期脱毛は起こりません。
初期脱毛を乗り越えなければ、若い頃のボリュームを取り戻すことはできないのです。
初期脱毛が起きたらツライとは思いますが、「しっかりとお薬が効いている証拠だ」「新しい髪の毛が成長を始めたのだ」と前向きに捉えましょう。
初期脱毛が治まらない場合

ゆっくりと時間をかけて髪の毛が抜けていく薄毛の症状とは異なり、初期脱毛は急速に髪の毛が抜け始めるため、驚く方や不安を覚える方も少なくないでしょう。
ミノキシジルを用いることにより起こる初期脱毛は、“古い髪の毛が抜け落ちることで新しい髪の毛が生えてきている”ことを意味します。
つまり、髪の毛が生え変わるための正常な現象なので、薄毛を改善するためには初期脱毛についても十分に理解しておくことが大切といえます。
ただし、医師の指導のもと頭皮環境を万全にした上でミノキシジルを使用しているのにもかかわらず、脱毛が2カ月以上続く場合や、頭部全体の毛量が短期間で大幅に減ってしまった場合は初期脱毛ではない可能性もあるので、一度クリニックに相談してみましょう。
まとめ

初期脱毛は誰にでも起こる症状で、効果が出ているサインのため心配する必要はありません。
ただし、どうしても不安な場合や、2カ月以上経過しても脱毛がおさまらない場合はクリニックに相談しましょう。
診察を受けることで、心配のない初期脱毛と分かれば安心することができますし、初期脱毛以外の原因がある場合は対処することができます。
抜け毛が心配だから、治療薬の服用を事故判断で中断してしまうことのないようにしましょう。